ラックフォーカス、ボケ、望遠:AI動画に効くレンズの言葉
AI動画のクリップを変えるレンズとピントの言葉、無視される言葉、本物のピント送りの作り方、最初から最後まで設計した1本の例を紹介します。

動画モデルの中にガラスはありません。レンズで光を曲げることは一度もなく、レンズの言葉が付いた映像がどう見えがちかを学んだだけです。だからレンズの言葉は、顔の後ろのぼけた背景のように、モデルが何千回も見てきた見た目を指すときに効き、絞り値のように写真家なら分かる数字を指すときには効きません。仕様書ではなく、見た目を書きましょう。
この記事で扱うのはガラスのほう、つまりどれだけシャープか、どれだけ深いか、どれだけ広いかです。カメラがどう動くかは別の話で、カメラワークのガイドで扱っています。レンズの言葉は試すのが安いので、まずは短いドラフトで1つずつ試しましょう。P-Video-2 のテキストから動画には、まさにそのためのドラフト切り替えがあります。
浅い被写界深度
これは最も強いレンズの言葉で、頼まなくても適用するモデルが多いほどです。「shallow depth of field(浅い被写界深度)」は、シーンに距離を書き込むと最もよく効きます。カメラの近くに被写体があり、そのはるか後ろに背景がある、という形です。ぼけ方も書き添えましょう。「the background melts into soft bokeh(背景が柔らかなボケに溶ける)」や「city lights become round blurred discs(街の灯りが丸くぼけた円になる)」と書けば、モデルは用語ではなく狙うべき絵を持てます。
開いた手のひらに載った古い真鍮のコンパスのクローズアップ。針が小さく震えている。浅い被写界深度:ピントが合っているのはコンパスだけで、後ろの森の小道は柔らかな緑と金色のボケに溶けている。カメラは固定、午後遅くの光。パンフォーカス
反対はもっと難しくなります。モデルが学んだ映像の多くは背景がぼけているからです。「deep focus(パンフォーカス)」だけでは引きが弱いので、手前から奥まで言葉にしましょう。「everything sharp from the stones in the foreground to the mountains on the horizon(手前の石から地平線の山まですべてシャープ)」のように書き、ぼけを呼び戻すスタイルの言葉は外します。「cinematic」「film still」「portrait」はどれも背景をぼかす方向に寄ります。広く高い視点も役立ちます。丘から見下ろす風景にぼけを期待する人はいないからです。
正午の漁港の広い眺め。手前の岸壁にはロープと木箱、中ほどに船、奥には丘を登っていく白い家々。パンフォーカスで、いちばん近いロープから丘の上の家までピントが合っている。カメラは固定、澄んだ空気、くっきりした細部。ラックフォーカスとピント送り
ラックフォーカス(ピント送り)は、ショットの途中でピントの合う面をある物から別の物へ移します。カメラワークのガイドでは9つの動きの1つとして紹介していますが、うまくいくかどうかを決めるのは準備です。テキストだけで本物のピント送りが得られるのは、ときどきにすぎません。成功率を上げるのは3つ。距離が大きく違う2つの物に名前を付けること、順番を書くこと(「sharp on the near one first, then(まず手前にピント、次に)」)、そしてほかに何も起こさないことです。カメラの動きも、モデルがクリップを使いたがるにぎやかな動作も入れません。
テキストで失敗し続けるなら、モデルに両端を見せましょう。Kling V4.0 の画像から動画は最初と最後のフレームを受け取ります。手前にピントが合ったシーンと、奥にピントが合った同じシーンを渡せば、その間の変化を描いてくれます。下の作例はまさにそれを行います。
広角と望遠
ここではレンズ名にも効果はありますが、効果の説明のほうがもっと効きます。広角の見た目とは、カメラが近く、空間が引き伸ばされた状態です。いちばん手前の物が大きく迫り、部屋は実際より奥行きがあるように見え、直線は端で傾きます。望遠の見た目とは、カメラが遠く、空間が圧縮された状態です。背景が被写体のすぐ後ろに大きく迫って見え、層が平らに重なり、フレームに収まる背景はごくわずかです。
だから両方を書きましょう。レンズと、それがフレームに与える効果です。「telephoto lens, compressed perspective, a huge setting sun right behind the cyclist(望遠レンズ、圧縮された遠近感、自転車に乗る人のすぐ後ろに巨大な夕日)」なら圧縮効果が得られますが、「telephoto」だけでは単に寄った構図になることがよくあります。歪みも同じです。「fisheye lens, round warped edges(魚眼レンズ、丸く歪んだ端)」はモデルがよく知っていて守ってくれやすい見た目ですが、「slight barrel distortion(わずかなたる型歪み)」は微妙すぎて安定して返ってきません。
通りのずっと先から望遠レンズで。自転車に乗った女性がカメラに向かって走ってくる。そのすぐ後ろには巨大なオレンジ色の太陽が低く浮かび、建物とほとんど同じ大きさに見える。圧縮された遠近感、陽炎、通りの層が平らに重なっている。カメラは固定。マクロ
「macro(マクロ)」はもう1つの強い言葉です。小さな被写体と、名前を挙げられる質感を組み合わせましょう。「water beads on a moth wing(蛾の羽の水滴)」「the threads of a linen cloth(リネンの布の糸)」などです。するとモデルはフレームを細かなディテールで埋め、ピントの合う範囲をごく薄くします。動きは小さく保ってください。マクロの尺度ではわずかな動きも大きく見えるので、水滴が転がる、触角がぴくりと動く、といった穏やかな動作を1つだけ頼み、カメラは固定します。
ほとんど何もしない言葉
- 絞り値、たとえば「f/1.4」や「f/16」。せいぜいぼけやシャープさにかすかに寄る程度です。代わりに「shallow depth of field」や「deep focus」と書きましょう。
- 正確な焦点距離、たとえば「24mm」や「85mm」。見た目が広角寄りやポートレート寄りに少し傾くだけで、正確さはありません。効果をはっきり説明する言葉の隣でだけ使いましょう。
- ブランド名やレンズの型番。ほとんど無視され、ときには望まないランダムなカメラの見た目を呼び込みます。
- 「Focus breathing」「chromatic aberration」「lens coating」。生成されたクリップに残るには小さすぎます。目に見える変化は期待しないでください。
- 「Anamorphic」。横に伸びた楕円のボケや長い水平フレアが出ることはありますが、クリップの形は変わりません。対応するモデルでは、アスペクト比は言葉ではなく設定です。
- 「Tilt-shift」。町や線路を高い位置から見たショットではよく効き、ミニチュアのような見た目になります。近い被写体ではほとんど何も起きません。
作例:1回のピント送りを設計する
目標はこうです。キッチンテーブルの手前に家の鍵が1本、くっきりと置かれています。クリップの終わりには、朝の光が差し込む部屋の奥の開いたドアにピントが移り、鍵はぼけています。動きは1つ、出来事も1つ、人は登場しません。
- ドラフトで言い回しを試す。手順4の動きのプロンプトを、ドラフト切り替えをオンにした P-Video-2 のテキストから動画で、そのままテキストとして実行します。ピント送りが起きれば、2枚のフレームはそもそも不要かもしれません。
- 最初のフレームを作る。下の1つ目のプロンプトを使い、Nano Banana 2.1で手前にピントが合った静止画を生成します。
- 最初のフレームから最後のフレームを作る。同じ静止画をNano Banana 2.1 の編集で開き、2つ目のプロンプトでピントだけを動かします。新しく生成せず最初のフレームを編集することで、テーブルとドアが同じ位置に残ります。これがあるからこそ、カットではなくピント送りに見えるのです。
- クリップをレンダリングする。Kling V4.0 の画像から動画で、最初の静止画を最初のフレームに、編集したものを最後のフレームに設定し、3つ目のプロンプトを使います。長さを選べるモデルなら短いほうを選びましょう。ピント送りは1拍の出来事で、長いクリップはモデルに出来事を足す隙を与えます。
- 真ん中を確認する。クリップの真ん中までスクラブします。部屋の形が変わったり鍵が動いたりしたら、編集プロンプトで変えない部分をもっと厳しく指定し、もう一度レンダリングします。
淡い色の木のキッチンテーブルに置かれた真鍮の家の鍵。カメラのすぐ近くにあり、くっきりとピントが合っている。その後ろ、部屋の奥にはピントの外れた開いたドアと柔らかな朝の光。浅い被写界深度、テーブルの高さからのローアングル、静かで動きのない空気。画面の中のものはすべて、今の位置のまま変えないでください。ピントを奥の開いたドアに移します。ドア枠と朝の光がシャープになり、手前の鍵は柔らかくぼけています。ラックフォーカス:ショットは手前の鍵にピントが合った状態で始まり、ピントがゆっくり奥の開いたドアへ送られ、鍵はぼけに溶けていく。カメラは完全に固定、部屋の中は何も動かず、変わるのはピントだけ。スタジオにできないこと
ここにあるモデルのフォームには、レンズ、絞り、ピントの設定はありません。レンダリング後にクリップのピントを合わせ直す方法もなく、編集できる深度マップも、クリックできるピント位置もありません。このページの内容はすべて、レンダリング時に言葉と、対応するモデルでは渡したフレームによって決まります。各モデルが受け付ける入力はカタログのそれぞれのページで確認してください。完成したクリップのピントを変えたいなら、もう一度レンダリングします。
レンズの言葉はプロンプトのほかの部分とも重なります。ドリーの中のラックフォーカスや、スローモーションの水しぶきのマクロは、難しいことを2つ同時にモデルに頼むことになります。まずはそれぞれを単独で成功させましょう。組み合わせのもう半分は時間の言葉の記事と水・煙・布の記事で扱っています。うまくいった言い回しを保つ方法はドラフト、固定、仕上げのワークフローで紹介しています。
よくある質問
35mmや85mmのような焦点距離を書いてもいいですか?
書けますが、弱いヒントにすぎません。レンズがフレームに与える効果を説明しましょう。空間が引き伸ばされ手前が大きく迫る広角の見た目か、被写体のすぐ後ろに背景が平らに圧縮された望遠の見た目かです。
頼んでいないのに背景がぼけるのはなぜですか?
多くのモデルは、近い被写体では背景をぼかすのが標準で、「cinematic」や「portrait」のような言葉がそれをさらに強めます。パンフォーカスを頼み、シャープに残すべき遠くの物に名前を付け、視野を広げてください。
レンダリング済みのクリップのピントは変えられますか?
いいえ。ここにはピントの再調整や深度のツールはありません。新しいピントの言葉でもう一度レンダリングするか、両方を受け付けるモデルで最初と最後のフレームを使ってください。